大友啓史監督キャラバンレポート

文/タナカシノブ
破格の規模で展開する世紀のプロジェクト『レジェンド&バタフライ』
大友啓史監督も奔走した、企画発表からこれまでの道のりを総まとめ!

WEBマガジン「レジェバタ公記」がスタート!このWEBマガジンでは、映画公開に向けた約2か月、『レジェンド&バタフライ』という一大プロジェクトを、これから全10回にわたってご紹介。歴史上のレジェンドとしてだけではなく、人間としての信長&濃姫の魅力を様々な角度から知ることで、映画をより深く理解し楽しめる盛りだくさんな内容をお届けする。第1回では、企画発表会見に始まり、SNSトレンドから新聞、テレビ、日本中の話題をさらった「ぎふ信長まつり」の様子、そして大友監督自ら各地を訪れた“全国キャラバン”の模様など、早くも“レジェンド”なトピックだらけとなったプロジェクトの、これまでのイベントをいったん振り返ってみよう!

「行けます、東映が本気です」創立70周年プロジェクト、総製作費は20億円

東映の創立70周年を記念して、日本映画史上最高峰のキャスト&スタッフが集結。総製作費20億円という壮大なスケールで織田信長とその正室、濃姫の物語を描く映画『レジェンド&バタフライ』。誰もが知る日本史上のレジェンド、信長を木村拓哉が、謎に包まれた濃姫(別名:帰蝶)を綾瀬はるかが演じる感動超大作だ。脚本は2023年の大河ドラマ「どうする家康」も控える古沢良太が、監督を「るろうに剣心」シリーズの大友啓史が務め、宮沢氷魚、市川染五郎、音尾琢真、斎藤工、北大路欣也、伊藤英明、中谷美紀といった名だたる俳優陣が共演キャストとして顔を揃えた。

政略結婚という最悪の出会いをした信長と濃姫が歩んだ、30余年にも及ぶ知られざる軌跡。“魔王”と呼ばれながらも悩み、葛藤しながらも前人未到の天下統一を目指した信長と、彼の暗殺を胸に秘め嫁ぐも次第にパートナーとして彼を支え続けるようになる濃姫。誰もが知る男、信長と、誰も知らない妻、濃姫との絆、交差していく2人の物語が展開する。

6月21日に行われた本作の企画発表会見で登壇した東映代表取締役社長の手塚治からは、本作に込めた想いや気合いを感じる発言が飛び出す。「総製作費20億円。稟議に判をつく時に少し手が震えました。行けます。東映が本気です、と申し上げておきたい」と笑顔を浮かべながら断言する姿には、強い自信がみなぎっていた。

“持っている男”木村拓哉、25年ぶりに挑戦する信長役に並々ならぬ意気込み!

そして登壇したキャスト陣の豪華さ、意気込みも、報道陣を沸かせた。時代劇初主演となった1998年放送のテレビドラマ「織田信長 天下を取ったバカ」以来、実に25年ぶりに信長役を演じる木村にとって、信長は並々ならぬ想いを抱く人物だ。「このような大作で彼(信長)を演じさせていただくのは名誉ですし、この上ない舞台を用意していただいたので全力で演じさせていただきました」と力強く語り、その言葉通り、これまで見たことのない織田信長像を圧倒的な存在感で体現している。本作の撮影中に木村は、信長がその生涯を終えた49歳という年齢を迎えた。信長と木村との運命を感じさせるエピソードも生まれた本作、「持っていますよ、その一言に尽きる」という大友監督の言葉通り、“持っている男”木村が見せる迫真の演技にも注目だ!
同会見で「いままで観たことのない信長と濃姫の“夫婦の物語”が描かれているなと感じました」と語った綾瀬は、「その時代に生きている2人の生き様、夫婦がひとつになっていく人生の描かれ方がとてもすばらしく、脚本を読み終わった時に心が持っていかれました」とコメント。信長にとってなくてはならない存在となる濃姫は、彼に臆することなく生涯対等に向き合い続けた凛とした姿が印象的な女性。3度目の共演にして初めて夫婦役を演じる木村と綾瀬の息ぴったりの掛け合いにも惹きつけられるだろう。

応募殺到の「ぎふ信長まつり」で 46万人が「信長様〜!」

その後、11月6日に木村と伊藤が揃って参加した「岐阜市産業・農業祭~ぎふ信長まつり~」も大きな話題に。新型コロナウイルス拡大の影響もあり、3年ぶりの開催となったこのイベントは「岐阜市の人口の2倍の応募が殺到(信長公騎馬武者行列)」「当選枠800人に対して12万人以上の応募(トークイベント)」「岐阜県で往復はがきがなくなった」などと連日多くのニュースが報道され、日本中から熱い視線が注がれた。

劇中同様、木村は信長に、伊藤は濃姫の侍従、福富平太郎貞家に扮して参戦。撮影衣装に身を包む2人と、地元の中学校や高校に通う学生たち、東映京都撮影所の俳優など総勢83名が集結し、騎馬武者行列はスタートした。6日の人出は過去最多のおよそ46万人。沿道に駆けつけた1万5000人の観客から「信長様〜!」と声がかかれば木村が手や扇子を振り返し、さらなる大歓声が沸き起こるなど、盛大な騎馬武者行列となった。
その後、木村、伊藤、大友監督が登壇したトークイベントを開催。大友監督は「信長は実際に生きた人なので、失礼のないようにということをスタッフ一同、とても大切にしてきました。我々の歴史の上に実際に居た人たちということを大切にした作品です。先人たちの魂を今の時代にどのように伝えていくかをみんなで知恵を絞りました」と語り、『レジェンド&バタフライ』について熱弁!木村は「(信長は)しっかり左右を見分けることのできる丘としてこの地を“岐阜”と命名したのですが、その場所から“天下布武”を掲げて前にしか進まなかった。この作品もこの岐阜から全国に、世界中に伝わっていったらうれしいなと思っております」と信長にとっての特別な場所、岐阜から今後の作品の広がりへの期待を込めた。

「令和、配信の時代に僕なりにケジメを」大友啓史監督自ら全国各地を行脚!

企画発表会見、ぎふ信長祭りのほかに、大友監督は自ら、札幌、盛岡、仙台、名古屋、大阪、博多と全国各地を行脚した。東京で11月に開催されたマスコミ・興行関係者向けお披露目試写後、ステージに登壇した大友監督はオファー時を振り返り、「古沢さんの脚本、木村さん、綾瀬さんで信長と濃姫の映画を京都で大友さんに撮ってほしい、という熱烈なものでした」とコメント。続けて「『龍馬伝』で大河を変え、『るろうに剣心』で邦画のアクション映画を刷新したように、今度は京都で令和の新しい時代劇を作るために、ある意味“劇薬”になってほしいとのことでした」と明かし、「多くの方の情熱に押されて映画完成までたどり着きました」と笑顔を浮かべた。

新型コロナウイルスの感染拡大を受け、監督作『るろうに剣心 最終章 The Final/The Beginning』(21)は公開予定が1年延期に。個人で都庁に出向いたり、知人を通して議員会館にまで足を運んだりして、映画館が閉鎖される理由を訊いて回ったという。「映画館が閉まっているなか、公開がどんどん延びていきました。僕は、映画を撮りたくてNHKを辞めた人間です。なんとかして映画館の大画面で映画を観る喜びをみなさんに味わってほしい。僕が小さいころから盛岡の映画館の暗闇で抱いていた感情を大事にしたいという思いもありました。オファーをいただいた時には『みんなが配信に向かうから、僕は映画の原点、京都に向かいます』というキャッチフレーズを自分自身のテーマとして心に秘め、京都に向かいました。その後、京都で半年を過ごし4か月の撮影を経て、いま、みなさんの目の前に立っています」と映画完成までの歩みにも触れた。

「コロナ禍で京都の観光客が激減してしまっていたこともあり、僕の30年のキャリアの中でも、絶対撮れなかったようなロケ場所が門戸を開いてくださり、そこで撮影できるというメリットもありました。バーチャルシステムが増え、スタジオは効率を求めて進むなか、俳優陣を含め何百人ものスタッフやエキストラがうごめくなかで、堂々と映画を作る。現場で起きたことをしっかり映像に収める。とてもオーソドックスな映画の作り方をしました」と胸を張る。

木村、綾瀬ら俳優陣の演技にも触れ、「本当に素晴らしい芝居をしています!映画館の大画面だからこそ眼福、ゴージャスというか、まるで自分が戦国時代にいるかのような感覚を味わっていただけると思います。映画館で映画を観ることの楽しみを私なりに追求し、スタッフ共々試行錯誤を繰り返しながら作り上げた作品です。令和、配信の時代に僕なりにケジメをつける、映画館で映画を楽しむことの喜びや体験を、なんとか、その道をもう一度しっかり提示してみたいという思いで作り上げました」と作品に込めた想いと決意を告白した。

さらに、「作品に共感してくださったり、皆さんの心を動かすことがあったら、ぜひ『レジェンド&バタフライ』を応援してください!」と呼びかけ、「最後まで劇薬でいようかなと思っています。実は初号後にも手を加えています」とニヤリ。続けて「東映のみなさんの目の色も変わっているし、木村さんもいつも以上にスイッチが入っていると耳にしています。綾瀬さん、伊藤さんもかなりこの作品に愛情を感じてくださっているようです。俳優部、スタッフといろいろな形で、(公開まで)まだまだ努力を続けていきたいと思います」と気合いを見せると、関係者からエールのような拍手が贈られた。

次回は『レジェンド&バタフライ』がどのように作られていったのか、撮影現場の様子をお届けする予定。乞うご期待!

文/タナカシノブ