お笑い芸人コンビのエルフはどう見た!?

構成・文/タナカシノブ
「濃姫がぶちかましてます!」
自称“歴女”のギャル芸人と時代劇初心者な相方が大興奮!
『レジェバタ』は歴史も恋愛もおもしろい!

映画『レジェンド&バタフライ』をより深く楽しむためのWEBマガジン「レジェバタ公記」。これまでは作品の成り立ちや、歴史にまつわるエピソードなどに触れてきたが、ここから4回にわたって、実際に映画を鑑賞した方々の感想をお届け!政略結婚で出会った信長と濃姫の物語を描く本作は、歴史映画としても恋愛映画としても楽しめる要素を持ち合わせている。
今回はその両方の側面から作品の見どころ語ってもらうべく、お笑い芸人コンビのエルフにインタビュー!織田信長を“ノブくん”と呼び、「もしもギャルが歴史の先生だったら(桶狭間の戦い)」といったネタ動画を公開する自称“歴女”の荒川と、「観るのはほぼ恋愛作品のみ!」という超恋愛体質で“恋多き女”として知られる、はる。『レジェバタ』を鑑賞し興奮冷めやらぬ様子の2人が語る、本作の注目ポイントとは?

――荒川さん、はるさん共に映画をとても楽しまれたようですが、まずは率直な感想をお聞かせください。

はる「私はこれまで、時代劇と呼ばれる作品は1回も観たことがなくて…。その理由は、時代劇は昔の言葉が出てきて、わからないことも多くて理解できないから楽しめない、世界観に浸れないんじゃないかと思っていたから。私が観るのはいわゆる現代の恋愛作品ばかりなんです。でも今回は、歴史、特に戦国時代が大好きな相方の影響もあったし、信長と濃姫、2人の物語ということで、恋愛映画としても楽しめそうだなと感じ、観てみようかと思い始めていた矢先のインタビューのお話だったので『これは観るしかない』って(笑)。夫婦の物語はもちろん、歴史的な部分もすごく勉強になりました」

荒川「冒頭から『観てよかった!キムタクの信長最高!』って、ワーっとなにかが込み上げてくる感覚がありました。信長はめっちゃ有名だから、観る人それぞれの信長像があると思うんです。もう本編開始30秒でキタコレ!ですよ。私の好きな信長が出てきました。木村さん演じる信長が家臣に髪をまとめてもらっているシーンで、『これこれ!』とテンションブチ上がりです。物語も想像していたものとまったく違っていて、『そうくるか!』と最初から最後まで驚きの連続でしたが、大好きな戦国時代の、大好きな信長と濃姫のカップルの映画はとにかく最高でした」

――本作が初めての時代劇というはるさん。慣れない時代劇で難しさなどを感じた部分は?

はる「正直、言葉も出来事も知らないことが多かったけれど、きちんと物語を追っていれば『さっきのはそういう意味だったのか』と。私みたいな歴史初心者でも、置いていかれるようなことはなく、物語をちゃんと楽しめました。気になる言葉は映画を観たあとに調べてさらに納得。まさか自分がそういう勉強っぽいことをするとは想像していなくて。逆に、なぜいままで時代劇を観てこなかったのかと思ったほど、映画を楽しんだ自分にちょっとビックリです(笑)」

――荒川さんは想像していた物語とまったく違ったとのことですが、特に驚いた描写を教えてください。

荒川「まずは“桶狭間の戦い”ですね。戦国時代のなかでも特に大好きな合戦なので、どんなふうに描かれるのかすごく楽しみにしていたので、『そんな感じでくるんや…』と驚きました。これまでいろいろな作品で桶狭間の戦いを観てきましたが、この描かれ方は予想していなかったです。それから、市川染五郎さんが演じる森蘭丸と、宮沢氷魚さんが演じる明智光秀がエグいくらいイケメンなのにも驚きました。速攻、2人のインスタをチェックして、素顔もイケメンなんやって。染五郎さんに関しては、歌舞伎も観に行こうと思っている勢いです。光秀はこれまで年配の役者さんが演じていらっしゃる印象があったので、あんなにエネルギッシュでイケメンな光秀はすごく新鮮。いい意味でメラメラしていてサイコーでした!」

――印象に残っているシーンを挙げるなら?

荒川「やっぱりラストシーンかな。なにこれ、なにこれってなって…言葉で表現するのは難しいけれど、とにかく引き込まれました。なんか心が『うわー!』ってなる感じ!」

はる「私もラストは、驚きすぎてすっごい情けない『え?』という声が漏れてしまうほどの衝撃でした。ラスト以上に印象に残っているのは、信長と濃姫の心の描写です。ずっと強い印象の信長が、濃姫が離れていったあとにどんどんやつれていき、『そばにいてほしい』という言葉を言った瞬間に涙がブワーっと出ました。そこから濃姫が突き放す…というやり取りがあってからのお互いが素直になった瞬間は、私がグッと心をつかまれた部分でした。胸が苦しくなるのは好きだということを、伊藤英明さん演じる侍従(福富平太郎貞家)や中谷美紀さん演じる侍女(各務野)から教えられ、濃姫が自分のなかでその気持ちをすぐに理解できないところとか、『好きってそう、恋愛ってそうだよね。わかる!』と共感したシーンでもあります」

荒川「私は泣くよりも驚きが多かったかも。信長がどういう結末を迎えるのか、有名すぎる史実を知っているからこそ、今回はどんなふうに描かれるのか。冒頭から驚きの連続だったので、結末の描かれ方がずっと気になって、ずーっと口開きながら観入っていました。いままでの信長を描いた作品とは違って、信長と帰蝶さま(濃姫)の、ほんまに2人だけの物語を軸に話が進んでいきます。そこに歴史的な出来事や信長の有名なエピソードなどがちょくちょく入ってくる感じ。多分、2回目3回目と、何度も観返すことでいろいろな発見がある気がしています。私自身、何回観ることになるんやろ…。あ、信長と帰蝶さまのアクスタ(アクリルスタンド)とかあったら、チケットと一緒に撮影していっぱいインスタにアップしちゃいそうです。アクスタ、作ってもらえませんか?(笑)」

はる「めっちゃ映画館に足運んでしまいそうやな(笑)」

荒川「やばいことになると思います」

――信長と濃姫、2人の物語が丁寧に描かれている本作ですが、濃姫はあの有名な信長の正室でありながら、記録があまり残っていません。お2人がこの映画から感じた濃姫の魅力を教えてください。

荒川「政略結婚で父親の斎藤道三から『嫁に行け!』と急に言われても、異論なしで行かなければならない。かなりエグい状況だけど、自分の意見はしっかり言うところはかっこいいわぁと思いました。信長と初めて顔を合わせて、彼から脚を揉めと命令されるじゃないですか。でも、長旅で疲れているから、むしろ揉んでもらいたいのはこっち、みたいなところを主張できるのはすごくかっこいいなって。本来なら、黙って言うことを聞くシーンだと思うんです。だって、相手はあの信長ですから」

はる「口だけならなんぼでも強がれるけれど、戦いのシーンでも『信長に助けられんでも私は行けます!』みたいな強さを見せるところ。ちゃんと実力が備わっているところはすごくかっこいいと思います。だけど、ほんまは怖さを感じているという女性らしい部分もある。そのバランスがすごく魅力的な人だと思います」

――お2人が戦国時代を生きるなら、どんな人生を送りたいですか?

荒川「信長のことはすごく好きだけど、結婚は絶対無理…。私は、彼の人生にいっちょかみしたいだけなんです。姫ってだいぶ大変だと思うから、濃姫チームのような布陣がいたとしても、私には務まる気がしません。信長が風車を買いに来る店の売り子とかで充分ですよ。『年貢うざいわ~』とか言いながら、畑を耕してるとかそういう人生がいいです」

はる「え、嫁にならんでもええの?」

荒川「やっぱり好きやけど、付き合うとかは無理かなぁ。信長以外の人とのほうが幸せになれる気がする」

はる「私は、命の危険と隣り合わせの信長を不安と闘いながら待ち続ける…みたいなのは絶対無理。濃姫のような強さはないから、正室はあきらめます。でも、側室にはなりたい。映画にも『子どもができました』って幸せそうな側室いたやん?」

荒川「あの子の人生、あそこから先がエグいと思うで」

はる「本当の理想は正室だけど、強さが足りないから側室で。ええやろ、希望なんだから(笑)」

荒川「そっか。希望だからなんでも言っていいのか。永遠の課題ってくらい悩むわ…」

はる「蘭丸にめっちゃときめいたから、付き合うなら蘭丸ちゃう?」

荒川「いや、蘭丸は仕事が忙しいと思うねん。デートしてても急に呼び出されて信長の元に行ってしまう気がする。この映画ではもともと好きなタイプだった明智光秀がかっこよかったから…とも思うけど、結果いろいろ考えて信長の正室やな。理想だから言ったもん勝ち!」

はる「結局、そこに落ち着くんやな(笑)」

――コンビで正室vs側室の戦いになりますね。

荒川「確かに!」

はる「取り合いやな」

荒川「お笑いの世界同様、厳しい世界やなぁ。まあ、そこが歴史の魅力でもあるんやけど」

――では最後に。荒川さんはギャル&歴史好き向けに、はるさんは恋愛作品好き&歴史初心者向けに、メッセージをお願いします!

はる「恋愛作品の好きなところは、胸がギュッとつかまれる瞬間です。恋愛作品を観る時は、当然胸キュンはある前提で観ていますが、恋愛映画として観ていないこの映画でも、しっかりとキュンとさせてもらいました。興味がなかったはずの歴史も、もっといろいろと知りたくなりました。騙されたと思って1回観たら、私のように新しい発見をする人も多いと思います。時代劇はハードルが高いと思っている方には『信長と濃姫っていう人たちの恋愛映画をちょっと観てみよう』、そんな気持ちで触れてほしいです」

荒川「ギャル的に言わせてもらうと、『濃姫がぶちかましてます!』って感じかな(笑)。歴史の話と思ってハードルが高くなるなら、なんやろ、教科書がプリ帳になった感じで見ればいいんじゃないかな。この時代の人にもギャルと同じように彼氏がおって…みたいな感覚。そんなふうに観れば『おもしろい!』ってなるはず。とにかく細かいことは考えず、『とりあえず、キムタク観に行き~!』って感じかな(笑)。ほんまに、おもしろいんで。『観て、飲みながら語ろうや』ってノリで、ぜひ!」

構成・文/タナカシノブ